再生可能エネルギーの利活用は、脱炭素社会実現に向けた重要な課題だ。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の価格低下などで導入意欲が低迷する中、鳥取県は県内の企業と協力して「鳥取スタイルPPA」を推進する。太陽光発電導入の新たな選択肢であり、エネルギーと経済の地域内循環を目指す試みでもある。
PPA(電力販売契約)は、個人や企業が自宅やビルの屋根などを貸し出し、発電事業者が無料で太陽光発電設備を設置する手法。個人や企業は、使った電気代のみを支払うという仕組みで「屋根貸し」とも呼ばれる。
「鳥取スタイルPPA」は、PPAの体制を県内の事業者のみで構築する取り組みだ。その先駆けとして、電力小売りサービス「Chukai電力」を展開する中海テレビ放送(米子市河崎)は、太陽光発電に蓄電池を組み合わせた「つくってためるトライアルプラン」を戸数限定で試験的にスタート。太陽光で発電した電力には燃料費調整額、再エネ賦課金が発生しないため、利用者は電気代を抑えられるほか、蓄電池が備わることで昼間にためた電気を夜間に使うことができ、災害時の安心にもつながる。契約期間は15年で、期間満了後は契約期間延長か設備の譲渡を選択できる。
同社営業部の佐古肇課長補佐(37)と伝送技術部の稲倉弦主任(45)は「エネルギーの地産地消を進めることで、鳥取県がより豊かになる仕組みづくりを目指したい」と未来を描く。